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某氏蔵『和漢朗詠集』

日本古典文学会
　『和漢朗詠集』は詩文の秀句及び秀歌を撰集したもので、編者は藤原公任である。
　某氏蔵『和漢朗詠集』は、巻上のみを存する巻子本一巻の古写本である。料紙は、裴紙を用いている。本書の原態は巻子本であったが、後に一時、折本装に改められたと思われる。紙数三十四紙で、本文は三十二紙まで、三十三紙は奥書書簡、三十四紙は白紙になっている。
　本書は第十三紙まで焼け焦げがあるが、これは折本を巻子本に仕立てた後に被火、補修して現代に至ったと考えられる。一紙は約二十行、一行には漢字約十四字を記す。
　本文の書写年代は、鎌倉初期を降らないと思われる。全巻にわたって朱書及び墨書の訓点が加えられ、行間及び欄外に種女の注記が施されている上に、紙背には漢文による注文が書き加えられている。