老坑端渓硯

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中国広東省広州の西方100kmほどのところに、肇慶という町がある。この町は西江という河に臨んでいて、東に斧柯山が聳える。この岩山の間を曲がりくねって流れ、西江に注ぐ谷川を端渓という。深山幽谷と形容される美しいこの場所で端渓硯の原石が掘り出される。
端渓の石が硯に使われるようになったのは唐代からで、宋代に量産されるようになって一躍有名になった。このころ日本にも渡って来たといわれる。紫色を基調にした美しい石で、石の中の淡緑色の斑点を「眼」という。鳥の眼のようなこの模様は石蓮虫の化石といわれてきたが、石眼は一種の含鉄質結核体であることが実証された。つまり酸化鉄などの鉄の化合物が磁気を帯びて集まり形成されたものである。こうした含鉄質結核体が沈積し埋蔵されたあとも、岩石生成過程でたえず変化して鉄質成分を集め、暈の数が幾重もある石品を形成した。実用には関係ないものだが大変珍重される。
端渓の石は細かい彫刻にも向き、様々な意匠の彫刻を施した硯が多く見られる。端渓硯の価値は、眼の有無、彫刻の精巧さ、色合い、模様などによるもので、いずれも骨董的な価値である。
掘り出される坑により、下記の違いがある。
[二格青]
一番浅いところの硯石。価値は一番低く、墨おりは今一つで、ある程度水を吸収する。そのため墨の中のニカワが残り、字を書く時に粘る。
[宋 坑]
最もリーズナブルな端渓硯。茶色がかった石色が特徴で、石質はバサバサして大変に粗く比較的硬く、墨おりも非常に早いが、おりた墨の質が少し雑。
[梅花坑]
梅花坑は大体宋坑と同じレベルだが、宋坑の硯質より幾分か細緻。
[麻子坑]
麻子坑は宋坑端渓とまったく逆。硯面は細緻すぎて、墨がすべる感じがして、墨おりは遅い。
[老 坑]
端渓硯の中でも最上級に位置し、多くは淡紫色をしている。墨おりは非常に良く、墨が溶けるようにおりていく感じを受ける。手ざわりの感触は、赤子の肌のようで、ここから産出する硯材のみを「水巌」と称す。

推奨サイト
http://www.minase.co.jp/tankei/index.htm
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A1%AF#.E6.BE.84.E6.B3.A5.E7.A1.AF


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