HOME                           學書指針INDEX

仮名の学び方

 仮名は、草書を更に簡略にされたもので、従って運筆の根本羲に於いては変りはないけれども、その発達が殆ど細字に限られていることと、連綿游絲を以てその生命とするものであるために、漢字の運筆と頗る趣を異にしているから、漢字が出来るからといって、直ちに仮名も出来るというわけにはいかぬ。よくその運筆に馴れ熟した後でなければ、仮名の妙味を発揮することは出来ない。

 多く曲線を用いて流暢優美に書くべきであるが、決して浮薄に流れてはならない。

 先ず単体の仮名をよく練習し、そのよって来る字源をも究めて、しっかりした基礎を作って置く必要がある


 仮名というと兎に角、すらすらと早書きをしなければならないもののように考えるが、それは草書に於けると同様の病弊である。

 仮名は僅かに四十字、仮に一字について五種の変体を数えても二百四十字に過ぎない。これを覚えて更に連綿の呼吸を悟ればよいのであるから、仮名は容易いが、一面からいうと、これだけの字数に無限の変化を寓しなければならぬのであるから、難しいといえば難しいものである。

 仮名では、大小・軽重・墨継ぎによる肥痩など、作字上の変化の外に、散らし書きによる布置の変化と、料紙による下絵や色彩の変化が極めて重んぜられ、これが以上の発達を遂げている。

 先ず平仮名や変体仮名の単体を究めたならば、二字、三字、五字しいうように連綿の法を学び、次に散らし方や墨継ぎなど仮名独特の布置法から進んで料紙の研究にも及ぶべきで、これが仮名学習の順序であろう。
 


仮名の古碑帖 

 仮名の法帖は頗る多く、而も肉筆が残存し、それを精巧なる写真印刷術によって複製したものが大部分を占めているのであるから、筆意が明瞭にわかり、従って単体のいろはと連綿の法を学んで一通り運腕に熟しさえすれば自由に好きな法帖を選んでそれを学び得るのであるが、ここでまず奇癖のない、そして誰が学んでも間違いのない一般向きの法帖を挙げて選択の便宜に供そう。

伝小野道風 秋萩帖

 これは万葉仮名として最も著名なもので、巻首に「秋萩の下葉いろづく」云々の歌があるので此の名がある。
 草書に近いもので、亀田鵬齋や良寛などの書の濫觴をなすものである。

 日本書学大系4 秋萩帖 (kohkosai.com)

伝藤原行成 和漢朗詠集

 和漢朗詠集と称するものはその種類がなかなか多く、今皇室御物となっているものだけでも三種ある
 その内の行成本といわれるもので、これは三種の内でも特にすぐれたもので、代表的な和漢朗詠集である。
 筆致隆麗にして滞らず、おほらかにして力があり、高い気品と余情を持っている。初歩の人は先ずこれによって十分に腕を鍛えるがよい。

 日本書学大系2 粘葉本和漢朗詠集 (kohkosai.com)

伝藤原行成 古今和歌集

 関戸氏の所蔵にかかるところから関戸本古今集と称されている。暢筆自在にして変化の妙を極めた名品である。

 日本書学大系2 関戸本古今集 (kohkosai.com)

高野切

 高野切というのはもと高野山に伝わったのでかく呼ばれるのであって、切というのは断片という意味である。
 内容は古今和歌集を書いたもので、昔から紀貫之の筆と伝えられているが、明らかに三種の異なった書風から成っており、便宜上これを第一種、第二種、第三種と区別して呼んでいる。
 第一種は、三種中最も変化に富み豊潤にして優雅な美しい書風である。

 日本書学大系2 高野切第一種 (kohkosai.com)

 第二種は荘重にして剛健の風があり、第一種に比すると聊か単調で変化に乏しい感があるけれどもそれだけに繊細な技巧を斥けて沈着古雅な趣がある。

 日本書学大系2 高野切第二種 (kohkosai.com)

 第三種はまことに軽妙な筆使いで、御物の和漢朗詠などの書風とも一脈和通ずる流麗典雅な趣致に富んでいる。

 日本書学大系2 高野切第三種 (kohkosai.com)

寸松庵色紙

 寸松庵色紙は、むかし織田家の臣佐久間将監真勝が入道して。京都柴野の寸松庵に住し、これを珍蔵していたのでこの名がある。
 紀貫之の筆と伝えられるもので、大胆に自由奔放に書き流してあるように見えるが而も周密な用意があり、自然にして高雅絶妙、最も異色ある名品である。

 日本書学大系2 寸松庵色紙 (kohkosai.com)

継色紙

 色紙形の料紙を二枚つづけて、それに一首の歌を散らし書きにしているのでこの名がある。
 小野道風の書と伝えられるもので、古淡にして老蒼、掬めども尽きぬ妙味がある。

 日本書学大系3 継色紙 (kohkosai.com)


関連サイト 好古齋 (kohkosai.com)