孔頴達碑座題字

 1974年、孔穎達碑を昭陵博物館に搬入する際、孔頴達碑の碑身を趺(フ 碑の台座)からはずしたとき、偶然発見されました。現在、孔頴達碑は別の趺にはめて展示されています。
 この趺は、高さ68p。4周に蓮花紋が線刻されており、横が131p、縦80p。刻字は、趺の上面の槽(箱状のくぼみ。実測で横67.5p、縦30.5p)の両側にあります。そこは碑身の枘(ホゾ)を槽に嵌め込めば、碑身の下方の部位(逆凸形の両肩)の下に隠れてしまいます。そのため、この刻宇は人目に触れることなく、当時そのままに残されています。
 この左方は横32p、縦22pに18字、右方は横33p、縦21pに22字、計40字が刻されています。大きさはもちろん、書体も楷書18字、他は行書・草書とまったくばらばらで、文章も行も成してなく、書きかけの字も見られます。また落書きのように方位もばらばらで、鐫刻の技術にも差があり風格もまったく違います。こうしたことから、数人の手によることは明らかです。
 これを調べた考古学者の推論では、この刻字は碑文を鐫刻するとき、工匠達が刻字の前に刀法を練習したり、弟子達に技術を伝授したりしたもので、なかには下等なものも見られる、といいます。
 その書法は、楷書では歐陽詢・虞世南の、行書では二王・太宗の風韻を感じます。初唐時代の師弟関係、その伝授の過程を知る上でも、また当時の書法の普及程度・芸術水準を知る上でも貴重な資料として注目されています。