宮人典綵朱氏墓誌

 典綵とは、宮官の尚功局の役人です。織物に関することを司ります。唐の時代には、典綵の位の上に司綵がいて、その司綵が正六品でした。隋のこの墓誌には、「典綵六品」とあります。唐の政治は隋を継承して、律令を整備しましたが、三省六部の内容はほぼ変わらなかったようです。
 なお、織物の縫製は、同じ尚功局の司製(典製)が担当しました。また、夫人の服の選定は尚服局が、皇帝の服の選定は殿中省の尚衣局が担当しました。
 誌文によれば、典綵朱氏は沛国の人です。柔順な人柄で徳が高かったとあります。大業6年(610)12月11日、53歳で亡くなり、その月の20日、河南郡河南県千金郷芒山の北嶺に埋葬されました。
 墓誌の文字は、懐の広い書です。隋の時代にしては珍しく、横画に強いうねりが見られます。そのため、ゆったりとしたムードが浸っています。ただ、亡くなった月日の干支が全く別人の書なのが気になります。