盧令媛墓誌

 《廬令媛(ロレイエン)墓誌》は、別に《充華嬪盧氏墓誌》ともいいます。盧令媛は、宮廷において天子に奉仕する女官です。
 誌文によると、令媛の祖父は廬渕といい、秘書監・使持節・安北将軍・幽州刺史を勤め、鍾繇の書を学び、子孫に伝えたとあります。父・道約は、あざなを季恭といい、司空・録事参軍を勤めました。母は、滎陽の鄭氏の出身で、鄭道昭の娘です。
 鄭道昭は、國子祭酒・秘書監・使持節・鎮北将軍・光青相三州刺史を勤め、むしろ書家として名を馳せました。
 墓誌の書は、北朝風ではありますが、繊細で懐の広い品格の高いものです。横面の起筆はソフトで、縦面の左右の払い出しは遠勢をもたせるなど、楷書の完成度としても高いものがあります。あるいは、伝説の鍾繇の書とは、このようなものだったのかと、北魏の昔に想いを馳せます。