虚中君子図

 この石刻画は、岩と、岩の手前の葉のある長い竹、岩の向こうの短い竹、それに2本の老竹の配置が素晴らしく、かりに書や詩がなくても不自然でなく、1幅の絵画として優れたまとまりを成し安定しています。岩の左側の肉太な力強い線は、画面全体を1段と引き締めており、岩全体に変化を与ています。また葉のある長い竹と短い竹はともに画面に奥行きを与え、太くて大きな2本の老竹に葉のないのは意識的です。これが特に竹のするどさ堅実さを表し、また画面や画情に変化をもたらしています。
 竹の葉や平地の草などを見ると、すべてが右の方になびいていますが、それは強い風雨や厳しい霜雪にも屈せず、その節操を守り抜いていこうとする竹の姿そのものであって、実直でしかもそのたくましさが遺憾なく表現され、その書も重厚味にあふれ、歯切れのよい力感を発揮しています。