達磨跌坐図

 この図は、達磨大師の面壁跌坐の姿を石刻画にしたものです。衣の部分の単純で力強いタッチと頭部の繊細な筆致とで、全体的な雰囲気のバランスを保たせようとしています。
 この図は唐代のはじめ太宗の貞観9年(635)に、大秦国の胡僧阿羅本が長安にきて伝えたキリスト教の一派ネストル教(景教)、あるいは延載元年(694)ごろには既に伝えられていたといわれるマニ教(摩尼教)、あるいはまた波斯の国教で南北朝の末から中国に伝来したゾロアステル教などを中心にした外来宗教と、既に漢の明帝の永年10年(67)に初めて中国に伝えられ、長い歴史をもついわば中国人の仏教的宗教観の、まったく異質な2つのものを1つの画面に描いた歴史的な意義をもつ貴重な作品です。
 図の左上には、ものにこだわらない堂々たる達磨自身の全貌を記したと思われる字句が刻されています。これは悟りの境地を表現したもののようで難解です。