蔵真・律公二帖

 この石は、1行目の蔵真2字をとって《蔵真帖》と呼ばれています。蔵真とは懐素のあざなです。蔵真帖の石は、宋の元祐8年に游師雄が真蹟に基づいて模刻したものです。縦を5段にわけて、第1段に《蔵真帖》、第1段の後半1/3ほどから第2段にかけて《律公帖》、下3段に周越・馬宗晦・文彦博などの《跋》と游師雄の《後序》があります。その間に李白の作と伝わる《懐素上人草書歌》が附刻されています。
 《蔵真帖》は字数が少なく、碑林第3室にあっては見落としてしまうほどの小品です。6行に50字、《自叙帖》と同じく彼の自伝を書いたものですが、《自叙帖》と文章が違います。
 この帖の書は石刻であるため、原蹟の面目がやや損なわれているように思われます。ただ《自叙帖》ほど狂逸ではなく古意があり、飛動して痩勁で、懐素の書法の特徴の「天真」が良くあらわれています。
 《律公帖》の方は、やや奔放であり流動的ですが、不自然な用筆は見られず、ともに格調の高い名蹟と言えます。