梁守謙功徳碑

 この碑は、梁守謙が興唐寺において経を造った功徳をたたえて、楊承和が撰文し、かつ承和自身が精妙な筆致で書したものです。碑文の第2行目に、*国(陝西省)公功徳銘とありますが、*国公とは梁守謙のことです。
 碑は、1行88字の46行、総字数は4000宇に近い大碑で、また碑側の紋様もきわめて遒麗です。梁守謙は、唐史にその伝はありませんが、『金石萃編』に、
 「此宦官梁守謙。造経於興唐寺。而護軍中尉楊承和。為銘之書之者也。頌此宦功徳」
とありますから、宦官であったと解ります。唐の第11代憲宗の信任が厚く、その爵位は至上であったといいます。
 撰書者である楊承和も宦官で、その書法は精妙で、この時代の風尚の一端をうかがうことができます。彼の書には、点画がガッチリとしていて、ひき締まった意志的な強さがあります。起筆や転折に十分に力をもたせ、1字1字は結体が正しく、着実に均衡を保持し、落ち着きのある重厚な横画が造形の主軸になっています。線は1字1字の隅々にまでゆきとどいた沈着な歐陽詢を思わせる筆使いで運筆しています。加えて、顔真卿を思わせる手慣れた豊潤な筆致で、終始意気が貫通しています。そして見る者に崇高な念を抱かせます。
 全体としては、知性的で、重厚味に溢れ、円熟の境に近い男性美を発揮しているとともに、古典を追及した謹直な運筆の冴えが感じられます