同州聖教序碑

 褚遂良の聖教序の碑は、《雁塔聖教序記碑》、《同州聖教序碑》の外、なお数刻あったようです。また、行書の聖教序もあったと伝わっていますが、今はその伝本を見ることはできません。
 現在見ることができるのは、《雁塔聖教序記碑》、《同州聖教序碑》の2碑です。この2碑の関係については、《同州聖教序碑》は
1.《雁塔聖教序記碑》の翻刻である
2.別の真跡から刻したもの
3.臨本
など、説が分かれています。
 また、その書品の優劣についても諸家の見るところは一致していません。
 《同州聖教序碑》は、碑文の末尾によれば、唐の第3代高宗・龍朔3年(663)に、同州に建てられました。
 《雁塔聖教序記碑》が建てられたのは、高宗・永徽4年(653)ですから、それよりも10年の後で、また褚遂良の没後5年のことです。
 碑文は、《雁塔聖教序記碑》と異なって、右から太宗の聖教序、つづいて高宗の聖教序記が刻されています。《雁塔聖教序記碑》、《同州聖教序碑》の拓本によって比べてみると、刻の感じは異なりますが、まったく同形の文字が並んでいます。しかし、異字もあり、一概に結論は出ないようです。
 《同州聖教序碑》は《雁塔聖教序記碑》に比べると、単調で明るさと風韻に欠けるように感じます。しかし、《雁塔聖教序記碑》のあまりにも艶やか、一見なよなよしている感じを嫌う人もいます。
 なんとも言えませんが、個人的には《雁塔聖教序記碑》のコピーのように見えてなりません。せっかく褚遂良を学ぶのなら、あえて《同州聖教序碑》でなくても、と思います。