碑林博物館

(1995年8月記)
 私が旅行するというと、「また西安ですか?」と言われるほど、碑林が中心となっています。ホテルは必ず皇城賓館。ここからだと歩いて碑林に行けるからだ。
 西安(旧名は長安)は、中国で名高い古都の一つです。陝西、つまりかつての関中地区は、西周を初めとする秦・前漢・前趙・前秦・後秦・西魏・北周・隋・唐の10の王朝が都を置いたところで、その期間も1000余年の長きにわたっています。西安一帯に都した西周・秦・漢・隋・唐の時代は、中国の歴史上、国家が統一され経済も文化もかなり栄えた時期で、今日残存する文物や古蹟も非常に豊富です。
 ちなみに、町並みは日々発展しています。今年ここを訪れて驚いたのは、「シンガポール」というファーストフードの店ができたことです。北京のマクドナルドは大型店で人も多いですが、ここはこじんまりとした明るい店で、ハンバーガーもうまかった。只、冷えた生ビールが30元、温かい缶ビールが3元なのと比べると、やや高価に感じます。この店の角を左に曲り、真っ直ぐ歩いて10分程で三学街の碑林(陝西省博物館)に着きます。
 20元を払い、陝西省博物館の入口・大門をくぐると、中央に美しい扇形の一対の池・畔池があります。この広場は1978年、初めてここを訪れてから変わっていません。ただ今年トイレの壁に貼ってあった案内版が新しくなりました。
 さて、そこを右に折れて第2門をくぐると両側に歴史陳列室があります。この歴史陳列室は、解放前の1944年6月に西安碑林の中に陝西省歴史博物館を設立したのに始まります。1950年5月には西北歴史博物館と呼ばれていましたが、1955年6月、今の名に改められました。1953年7月より歴史陳列室をオープンしましたが、当時、博物館に収蔵されていた文物といえば、石碑を除くと、指折りのものは数えるほどしかありませんでした。中華人民共和国の成立後、国民経済の回復と発展にともない、文物考古学の研究も重視されるようになり発展し、数多くの実績をあげました。
 そして、1991年6月20日、1億2000万元の巨費を投じ、南郊唐大雁塔西北1240mの場所に陝西省歴史博物館がオープンしました。歴史博物館では、主に周秦漢唐の歴史文化・37万点におよぶ収蔵文物の分類研究・博物学研究・文物保護の科学実験を重点に、2700余点の銅器・金銀玉器・唐墓壁画・陶俑・貨幣・陶瓷玻璃・秦漢磚瓦・漢唐銅鏡が、近代的なフロアーに、整然と陳列されています。
 なお陝西省博物館の歴史陳列室は、現在、右側は中国古代史博物館、左側は古代史に関するイベントホールとして利用されています。
 さて、ここ陝西省博物館には、現在3000余点の文物が展示されています。解放後(1949年)間もないころは、博物館全体で8〜9人しかいなかった研究員も、現在では140〜150人に増え、保管部・陳列部・群衆工作部・複製部・事務室が設けられています。保管部は適切な保管と便利さを原則として、各種の文物を収集・整理・保管しています。陳列部は科学研究を基礎として、文物の陳列や展示を担当し、群衆工作部は来館者を接待したり、また解説したりします。複製部は主に写真・拓本・模写などの方法で調査して修復を行い、陳列・展観と科学研究の遂行に役立たせています。
 1980年には陝西省博物館の収蔵する文物は7万余点に達しました。しかも、その大部分は出土した地点・時期が明確で、出土状況についての科学的な記録も作られており、かなり高い科学的価値と歴史的価値を備えています。そして、その内容の上から「中国古代史」「石刻芸術」「碑林」の3大部分に分かれ、さらに10の陳列室に分けられています。
 さて、右側の歴史陳列室の奥半分は旅游商店になっています。その前に一つ碑亭があります。歴史陳列室が終わると第3門があります。門に続く右側の棟は複製品の売店で、その対面に、《景龍観鐘》があります。第3門に続く左側の棟には外国人向けの休息室があり、その対面には、《大夏石馬》の小亭があり、《景龍観鐘》と対象をなしています。
 《景龍観鐘》《大夏石馬》それぞれの脇に、17楹の長い陳列室(廡)があり、そこが中国古代史(歴史)陳列室になっています。ここは撮影禁止ですので注意してください。この左右の陳列室と中央の通路との間に、八角の碑亭が3個ずつ計6個あり、昔は清朝の名碑が一つずつ収められていたそうですが、今は6個すべてが土産物屋になっています。
 左側の中国古代史陳列室は、周・秦・漢の歴史陳列室です。そこには、張騫・班超(出使西域路線図)、高昌国・西漢・烽燵からの出土品(敦煌壁画・鋤・彩絵騎馬俑・布製の靴・木簡・矢・刀剣・綿・絹の布切れ・植物の種・松明の燃え残り)、唐国内の出土品(絹織物の残片・陶彩馬・玉帯袴・唐代の墓石拓本「胡旋舞」)、楽舞壁画(模本、唐代)、壁画拓本・仏画・女伎楽壁画(模本、北周)などが、陳列されています。
 右側の中国古代史陳列室は、隋・唐の歴史陳列室です。そこには、仏教芸術(仏像を主とした石像・布に書いた仏画)、異国から入ってきたもの(波斯(ペルシャ)の金銀の壺・皿・波斯・希堯などの外貨・絹画・「漢委奴国王」の金印)、長安城内出土品(騎馬俑・壺・彩絵陶碗)、北周・晋・北魏・北朝の石窟(模本)、魏・晋の牛耕図、大秦景教流行中国碑・玄奘法師像の拓本、仏龕頂部説法図、礼賓図壁画(模本)などが、陳列されています。